久しぶりにコラムを書いてみます。最近この話をよくレッスンでしているので。改めて人間の「感覚」って凄いよね、の話。

味覚:いちごのキャンディーを舐めてみる。甘い・酸っぱい・硬い・いちごの香り・溶けていくヌメりetc… 言葉にするとこんなに並べることになるのだけど(1度には言えない)、味覚はそれらの情報が一瞬で「わかる」。

聴覚も同じようなことが言える。縦にも横にも12個の音の組み合わせで繰り広げられる音楽の情報を、一瞬で耳はキャッチすることができる。そして響きの情報を体内へ。イメージが見える、心の震えが起こる、時には体の感覚へ訴えかけてくる。それらは言葉より強烈な「わかる」感覚を私たちに与えてくる。

「痛い」と言葉を並べて言っても、どれだけ本人が痛いと感じているのか、わかりにくいことがあるけれど、響きはリアルだ。FFF(フォルテシシモ)&sF(スフォルツァンド)&減七・・・現実的で暴力的で涙も出ない、唖然とする痛み。PPP(ピアニシシモ)& >(アクセント)&減七・・・夢の記憶の中で微かに疼く痛み。響きの情報は、一瞬で「わかる」世界へ誘う。

音楽家になるための耳の善さは、ソルフェージュ的な要素も当然欠かせないのだけれど、響きへの「感度」の要素も大きいと思う。「楽譜を読む」ルールを学ぶ最大の楽しみは、響きからもらうこの贅沢な感覚なのだと思う。

プロになっていくということは、更にこれらをリアルに相手へ伝える技術が必要になってくる。大きな筆使い〜細やかな筆使いまで、大きなキャンバスに自在に響きの絵を描くテクニックが求められる。家の練習からもどれだけ耳が広い空間感覚をイメージできるか・・・空間に広がった響きの微粒子を耳で食べ、ただただ感じ応じていく。その思考しない感覚に完全に乗っかれたら、どんなに自由だろうと想像する。

楽譜から読むドラマを誰かとシェアでき、それが明日の活力・視点の変化へ繋がるなら… そんな時間と空間の創造を目指して、今日の練習を重ねたい。

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