生徒たちを見ていて、このやり方で、目前の本番が多少うまくいかないことがあっても(その1〜2割の練習を本番曲に当てていれば、うまくいったかもしれない、と思いがちですが)、年単位の長い目で見ると、断然伸びてきます。
今、難関とされる日本の音大の入試課題は、30〜40分のレパートリーを要します。あっちが良くなったと思ったら、こちらが上手くいかない、というジレンマを抱えながら、練習をやりくりしていくことになります。目前の本番・10分の曲だけをとにかくさらって、それが終わったら次の譜読みに取りかかるというペースだと、複数の曲のさらい方がわからない、ということになります。
そして、もう少し考えてみたいのは、この長さを弾くのに、この長さしか弾けない、という実力では苦しいということ。倍近いレパートリーを抱えることが習慣化している人であれば、半分の長さをさらうことは、そんなに苦しくないはずです。マラソン選手も走り込みをするのと同じように、レパートリーを抱えながらさらっていく感覚を身につけておきたいです。
よく、この曲だけさらって本番が上手くいけばいい、という考え方の人に会います。でも、ベートーヴェンのソナタを、5曲知っていて1曲弾くのと、その1曲しか知らない人と、弾く感覚も楽譜の見え方も、経験から違ってきます。貪欲にレパートリー作り。充実の20代へ繋げるためにも、ぜひ積極的に取り組みたいところです。