私にとっての自主リサイタルは「論文発表」に近い感覚です。リサイタルという形で「出してみる」ことで、自分の中でクリアになっていくことが多いです。プログラミングがユニーク、という感想はよくいただくのですが、前のリサイタルが終わって1年ぐらいは興味のままに楽譜を取り寄せたり自由に弾いたりし、だいたい1年前から頭の中でまとめて、絞り込んでいきます。このプログラミングは準備の中でも一番ワクワクする時間(そしてキャパオーバーだったことに気づくのは本番寸前、というパターン…)。
学生を卒業してすぐのリサイタルは、それまで勉強してきたものをメインに出すことができます。でも回を重ねてくると、昔のレパートリーを引っ張ってくることには限度があるし、私自身も変わってくるので新しい曲に取り組みたくなります。ピアノ練習だけに集中できた頃とは違う環境の中で、暗譜も含めてどのように取り組んだか、ひとつのサンプルとして、2回に分けて書いてみたいと思います。1回目は今回のプログラムを勉強する上で役立った本やDVDの紹介を、2回目は奏法・レッスン・メンタル・体力に関して、を予定しています。
私の場合、ピアノを弾いていない時間が重要で、その時にメインになるのが、どこでもできる読書です。情報収集も好きなので、ネット活用しますが、やはり研究・専門分野に関しては本でないと得られないことが多いと実感します。本・CD・楽譜に関しては自分への投資と思ってます。
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【スクリャービン:2つの即興曲 Op.12】
Op.11が24調で書かれた「前奏曲集」、Op.19がソナタ第2番。ショパンの影響が感じられるスクリャービンの中でもわかりやすい初期の小品集です。1番はプレストで、実際に弾くことが不可能な高速メトロノーム指定(スクリャービンあるある?!)に戸惑いました。2番はショパン:ノクターン13番ハ短調Op.48-1の影響を感じる作品。両作品ともFis-dur、b-mollと調号の多い点、左リズムに「海」を感じさせる点(ソナタ第2番に通じる世界観)、共通しています。参考に読んだのがこの本。19世紀後半のロシアの空気を感じます。
【ドビュッシー:映像第1集より「水の反映」】
【ドビュッシー:前奏曲集第1集より「沈める寺」】
この2曲は以前弾いたことがあり。読譜に関して「沈める寺」は注意が必要なので、その点に関してこちらの本と、ドビュッシー自身の演奏を参考にしました。
あと、こちらも参考にさせていただきました。読みやすく面白かったです。
【メシアン:前奏曲集より「風の中の反映」】
メシアンの若かりし頃の作品なので、直接的に参考になった本ではないのですが、メシアンという存在を知る上で、脇に置きながら練習していました。
【トゥルヌミール:12の前奏詩曲より「三位一体礼賛」Op.58-12】
感想をいただいた中に、トゥヌルミール目当てだった方が何人かいらして、選曲してよかった!と思いました。メシアンやフランクに影響を与えたフランスの作曲家。上記のメシアン本にも名前が出てきます。オルガニストとして有名で、オルガン作品を主に書いています。楽譜取り寄せに、確か3週間ほどかかりましたが、ピアノのオリジナル作品として出版されています。
楽譜(アカデミアのサイト)→https://www.academia-music.com/products/detail/35645
【ラヴェル:鏡より「鐘の谷」】
一昨年前に行ったリサイタルで久しぶりに「鏡」全曲聴いて、「鐘の谷」の魅力に気づかされました。弾いていると、本当に「谷」で風を感じるような感覚に襲われます。演奏に関してはこちらも参考に。昔の楽譜で練習していたら、音抜けの記載ミスがあることが発覚し、定期的に新しい版で確認しておかないと怖いなと思った次第。
【シューベルト:3つのピアノ曲(即興曲) D946】
ミュンヘン留学中にこの曲を知って、いつか弾いてみたいと思っていました。第2番はシューベルトのオペラ「フィエラブラス」のメロディーが使われているとのことで鑑賞。恥ずかしながら、シューベルトのオペラ、初めてみました・・・すごく面白かった。皇室の話題で持ちきりの世間でしたが、このオペラ見ながら(8〜9世紀が舞台)いつの時代も変わらないなぁと思いました。で、この2番のテーマに使われているのは、3幕冒頭のエンマとコーラスによる「Bald tönet der Reigen」です。
あとシューベルト後期やるならオススメしたいのがこちらの本。3つのピアノ曲の1番にも出てくる、付点リズム(4分割)と3連符をずらすor合わせる問題。この本でも言及されています(今回、私は3分割で弾きました)。演奏者ならではのシューベルト考で、臨場感と説得力があります。
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次回は(来週更新になりそう)、49歳でのステージ準備に際し、それまでと変更したこと、工夫した点など、ご紹介したいと思います