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2021年夏・コンクール感想

8/16,17はピティナ全国大会E級の審査、18は生徒が出場していたF級を聴きに、浜離宮朝日ホールへ連日足を運びました。6月〜8月の審査も一区切り。沢山の熱演を聴かせていただきました。

印象的だったのが、どの審査会場も欠席者が少なかったこと。ホールの本番で弾きたいという気持ちが、ひしひしと伝わりました。前日〜当日の過ごし方、メンタル、体力。緊張の中、1回で出し切る感覚を取り戻したい…とても理解できました。

若い人がコンクールの結果を受け取って「自分には才能がある or ない」「ピアノをやめる or やめない」という判断へと結びついてしまうことを時々聞くのですが、審査の立場からすると、そんな大事なことをコンクール結果に委ねるのは、ナンセンスと思ってしまいます。審査員はその日の演奏のみ、1個人の視点でジャッジを行うわけで、その人の音楽総合能力や音楽人生を判断しているわけではないからです。

コンクールとは自分の感覚を積み上げる場であり、もし大事な決定をするならば、日常のレッスン・練習の中で判断した方が本質的と感じます。才能に至っては、アルゲリッチからすればみんな才能ナシなわけですから(←それを言っちゃ、おしまい?!)、どこを基準にするのか、という話もあります。

「切磋琢磨は、本質のためであれ」…目前のことへ一生懸命になりながら、長いスパンで捉えるスキルも身につけよ、音楽人生は長い。私は若い頃、コンクールに対して本当にいい教育を受けたな、と思います。理解が難しかった時期もありましたが、年を重ねることに、そのありがたみを実感しています。

今回審査してみて、ピアノが人生を豊かにしてくれるもの、そして、成長と気づきをもたらしてくれるもの、という気持ちを一層強くしました。若い才能発掘、普段では体験できない素晴らしいホールでの経験、審査員からのコメントなどのメリットを生かしつつ、いつかコンクールがフェスの一環になって、歴代の入賞者たちやベテラン演奏家のコンサート、ワークショップ等も一体になったものへ発展していってほしいなぁ、と願っています。コンクールを受けた人たちが、その先にはこういう音楽人生があるんだ、と見据えていけるように。

演奏の感想も。やはり「読譜」でしょうか。特に古典において読譜の仕方に、気になる点が多かったです。大学生の部でも、ドミナント→トニック、カデンツ、2度→3度の解決、転調、アーティキュレーションの感覚に薄い演奏も少なくなく、音とリズムは合っていても違う曲に聴こえることがありました。sfやアクセントが反映されていない演奏が多かったことも指摘しておきたいと思います。

表現の質としては、譜面の解釈を「音色・響きの変化」で創っているのか、「感性でなんとなく」弾いているか、の違いは大きいように感じました。耳が複雑な情報を聴き分けられるスキル、私も心したいと思います。

感染症対策で大変な中、審査に立ち会えたこと、そして生徒たちへ本番のチャンスをくださったこと、感謝の気持ちです。実施してくださった運営の皆様に、心より御礼申し上げます。

また秋へ向けて、この夏の気づきをレッスン・演奏へ咀嚼していきたいです。

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